PT大沼俊博の臨床家ノート 幼児から学んだハンドリングのヒント

私が新人のころ、ハンドリングが上手な先生の手ってどんな感じなのだろうと、師匠や先輩方の手や身体の使い方を観察していました。

憧れで遠い存在でした。

先輩方のハンドリングを学び、見よう見真似で担当患者さんに同じように試みようとしてもなかなか難しい…。

先輩方のように患者さんをうまくハンドリングして治療に努めたいと真剣に考え、日々の臨床をもがいていました。

そんな日が続いたある日、実家で暮らしていた私に姉の子どもの子守りのお鉢が回ってきたのです。

甥っ子を抱くことに慣れていないわたしは緊張でガチガチです。

『どのように触ったら泣かない??』

答えがわからないまま自信もなく、そのうえ緊張して甥を抱くと間もなく泣きだしました。

緊張と幼児を触れることに自信がない私のガチガチな腕と身体に包まれてはさぞかし不快と不安を感じたのでしょう。

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大泣きでした。

甥っ子が泣いているときは予測ができない運動を示すため、私との筋緊張のぶつかり合いになります。

必死になって窮屈に抱くと余計にもがいてしまいます。

しかしゆとりをもって抱いてあげると、もがかなくなる変化を感じました。

『押してもダメならみたいなものか??』

数日甥っ子と過ごす日々のなかで感じることがありました。

機嫌よく抱っこされ、自らもごきげんに動いているときは、抱っこの際の支持面は最小限であり、抱っこの感触を軽く感じるのです。

また眠ってしまっているときは筋緊張が低くなり、支える面も広く、抱っこをしている甥っ子を重く感じました。

20歳代のわたしは、甥っ子と過ごす日のなかで、患者さんのハンドリングを考えていくうえで、以下のようなヒントをもらいました。

1.運動時に筋緊張の亢進を認める患者さんに対して強引な誘導をおこなうと、力のぶつかり合いになってしまう。

このようなときはセラピストの理想の型にはめようとせず、患者さんの持つ運動を共有することもよい。

2.覚醒レベルの低い人は、筋緊張が低くなりやすい。

運動を導くには、眠りやすい肢位よりも、運動につなげる肢位の選択を考えた方がよい。

3.自ら運動をおこなおうとしている患者さんへのハンドリングは最小限で済む。もしくはハンドリングの手を離すことができる。セラピストが感じる誘導時の抵抗も最小限なものとなる。

患者さんに触れる際の一助になれましたら幸いです。

 

執筆者
大沼 俊博 PT, M.S. (Health Sciences)
oonuma
六地蔵総合病院 リハビリテーションセンター 副センター長
関西医療大学 保健医療学部 理学療法学科 助教
関西理学療法学会 理事
関西理学療法学会 神経疾患理学療法 認定講師
関西理学療法学会 基礎理学療法 認定講師
株式会社WorkShift セミナー事業部

 

大どんでん返し!通所リハビリ・訪問リハビリの要支援者へのリハビリテーションが評価される

2018年度介護報酬改定は、サプライズな改定項目が目立つ。

その中でも、通所リハビリテーション・訪問リハビリテーションにおける要支援者への評価は大変意外な改定であったと言える。

財務省の要求では、通所リハビリテーション・訪問リハビリテーション・訪問看護ステーションにおける要支援者へのサービスは新総合事業へ移行することを求めていた。

そのため、2025年までに要支援者の新総合事業への意向が検討されていた。

しかし、今回、通所リハビリテーションと訪問リハビリテーションにて要支援者へのリハビリテーションマネジメント加算、生活行為向上リハビリテーション実施加算、事業所評価加算(訪問リハビリテーションに新設)が認められたことことにより、近い将来における新総合事業への移行の可能性は極めて低くなったと考えられる(下図)。

一方で、訪問看護ステーションにおける要支援者へのセラピストによるリハビリテーションの評価が下がり、通所リハビリテーションと訪問リハビリテーションの役割がより明確になったと言えるだろう。

要支援強化

通所リハビリテーションと訪問リハビリテーションにおいて要支援者へのリハビリテーションが評価されたことは新時代の幕開けと言っても過言ではない。

在宅リハビリテーションが加速する中においては、要支援者のADL改善や通所介護などへのトリアージを実現する通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションが高く評価されていくのは間違いないだろう。

しかし、通所リハビリテーションや訪問リハビリテーション側にも課題が山積である。

医師の関与
マネジメントの体制
理念の構築
在宅リハビリテーションの技術
などの不足は多くの事業所で共通の課題である。

今後、益々、通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションから目が離せない状況となった。

PT大沼俊博の臨床家ノート 内腹斜筋と外腹斜筋の謎 (その1)

以前のお話のなかで内腹斜筋を単独で触診可能な部位は、上前腸骨棘の下方2cmの水平線上内側の位置ですというお話をさせて頂きました。

これは内腹斜筋の骨盤内の横線維の活動を反映する部位となります。

また外腹斜筋を単独で触診可能な部位として、第8肋骨下縁の部位のご紹介をさせて頂きました。

これは肋骨と腹直筋鞘の間を走行する外腹斜筋の斜行線維の活動を反映する部位となります。

今回のお話では、内腹斜筋、外腹斜筋の単独部位以外で内腹斜筋と外腹斜筋が重層する部位についても触れさせて頂きます。

内腹斜筋単独部位、外腹斜筋単独部位以外の部位、すなわち内外腹斜筋重層部位は広い範囲となります。

2009年頃から、私達の研究にて内腹斜筋と外腹斜筋が重層するエリアに多くの電極を配置し、様々な課題において筋電図学的研究を進めてまいりました。

あるとき、内腹斜筋と外腹斜筋の単独部位と共に、内外腹斜筋重層部位に複数の電極を配置し、立位における筋電図波形について検討してみたのです。

このときの筋電図波形をみた瞬間、衝撃が走りました。

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内腹斜筋単独部位と共に、両側の腸骨稜を結ぶ線より下部で骨盤内の内外腹斜筋重層部位において、内腹斜筋単独部位と同様の筋活動の増大と共に類似波形を認めたのです。

すなわち立位では、骨盤内に位置する腹斜筋において筋活動の増大を認めることが判明しました。

この時の解釈として、骨盤内の内外腹斜筋重層部位においては、内腹斜筋単独部位と同様の波形パターンであることから、内腹斜筋の横線維の活動を反映しているものと考えました。

何人もの被験者の方において、背臥位では全電極の振幅は静かなものであり、立位になると内腹斜筋横線維のエリアの筋活動が増大しました。何度繰り返しても同じ波形を認めたのです。

なぜなんだ?? と大きな疑問を持ちました。

今回のお話から、立位においては、内腹斜筋の横線維の筋活動が増大することをお伝えできていれば幸いです。

今後もこの臨床家ノートにて、内腹斜筋と外腹斜筋の謎の解明を進めていきたいと思います。

執筆者
大沼 俊博 PT, M.S. (Health Sciences)
oonuma
六地蔵総合病院 リハビリテーションセンター 副センター長
関西医療大学 保健医療学部 理学療法学科 助教
関西理学療法学会 理事
関西理学療法学会 神経疾患理学療法 認定講師
関西理学療法学会 基礎理学療法 認定講師
株式会社WorkShift セミナー事業部

PT・OT・STとキャリア・デザイン

キャリア・デザインとは、一言で説明すると、「今まで歩いてきた道を省みて、これからの自分の道を主体的に選択し歩いて行く」ことである。

実は、人は未来のことばかりを考えてしまうが、キャリア・デザインで最も大切なことは過去と現在である。

過去の自分の歩いてきた道のりを省みたときに、自分は何を大切に生きてきたのか?自分は何を拒絶し、何を受け入れてきたのか?を感じることで、自身の価値観が明確になる。

その価値観を満たすために、現在何をするべきかを考えると自ずと未来の目標が決まる。

よく未来の目標のために現在の時点で自分自身に苦痛を与える人がいるが、そのような方法は長続きしない。

苦痛・きつい・しんどいという感情は、決して自分自身の価値観を満たすものにはならず、モチベーションが続くことはない。
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まずは、自分自身の価値観を満たすことに挑戦する姿勢が大切である。

例えば、作業療法士として働いてきた道のりを考えた場合、在宅における自立支援が自分自身の中の価値観を満たすものだったとする。

その場合、現在取り組むべきことは、担当患者の在宅復帰後の自立支援への取り組みや介護施設と連携をした自立支援の評価モニタリングを行う事などかもしれない。

これらのことを継続的に取り組めば、在宅における自立支援のノウハウが蓄積し、作業療法士の労働市場における競争優位性を高めるだろう。

特に、経験が5年から10年ぐらいのセラピストにはキャリア・デザインが重要となる。

PT・OT・STとして仕事を始めて5年~10年前後は、特段不満はないが、本当にこの仕事を続けていいのかと悩む時期である。

一方で、PT・OT・STとしての仕事は、40年以上続けていく可能性が高い。

今一度、キャリア・デザインを考えてみてはいかがだろうか。

 

2018年度診療報酬・介護報酬改定 入院時からの在宅復帰に向けた取り組みが評価される

2018年度診療報酬改定では、「入院時支援加算」が導入され、入院を予定している患者に対する治療や退院に関する支援が評価されることになった。

日本の入院は緊急入院が多く、このことが在宅復帰や在院日数の短縮の阻害要因になっているとの指摘があり、予定入院患者を増やしてくことが重要と考えられている。

そのため、入院を予定している患者に対して医療機関が積極的に治療や退院に関する支援を行うことが重要と考えられ当該加算が新設された。

入院時連携

今回は介護報酬改定でも、介護支援専門員の入院時の医療機関との連携が評価されている。

従来からあった入院時情報連携加算が二段階評価となり、上位加算である「入院時情報連携加算Ⅰ」には、入院後3日以内に医療機関に対して情報提供を行うことが算定要件として定められている。

医療の「入院時支援加算」や介護の「入院時情報連携加算Ⅰ」は、入院前、入院当初から在宅復帰や退院後の在宅支援を行うことを求めていると言える。

介護支援専門員

退院間際になって、退院先を探すことや、退院後の生活調整を行う医療機関も散見するが、このような場合、患者が在宅に復帰した後に、転倒、骨折、肺炎、介護困難となり再び再入院をすることも多い。

入院時から患者の身体機能だけでなく、生活面でのアセスメントを行い、時間的余裕を持った中での退院支援を行うことが重要となる。

このような背景からセラピストも入院当初から患者の生活背景や介護力などを評価し、退院に向けた支援を行うことが求められるだろう。

PT大沼俊博の臨床家ノート セラピストの声かけの力

脳血管障害片麻痺患者さんの立位保持練習において、麻痺側の大腿四頭筋の筋緊張低下により、膝関節が屈曲してくるケースがあります。

非麻痺側の上肢にて手すりを把持して頂くなかで、理学療法士や作業療法士が患者さんの膝をサポートしながら立位保持を促すことは、練習のなかのひとつの手段となります。

この時、セラピストが黙々と膝の伸展を助けるようにサポートしますと、患者さんはセラピストの手にどんどん頼ってくる、もたれるように預けてこられることがあります。

私たちは患者さんになんとかご自分で膝関節を伸ばしてキープして頂きたい思いがありますので、最初は膝への介助は多いですが、徐々に離していくように努めることでしょう。

この時に有効になるのが、我々の声かけです。

臨床ではよくコマンドを入れる、口頭指示を行うなどと表現します。

立位保持練習中に、麻痺側の膝関節が徐々に屈曲してくる場合、そろそろ曲がってくるなと感じた時に、

『はい、膝を伸ばして!!』

と声を掛けます。

声かけに対するご理解を頂ける患者さんには即時効果を認め、大腿四頭筋がキュッと収縮します。

また時間が経過して膝が曲がってきましたら、

『はいお膝が曲がってきましたよ、もう一度しっかりと伸ばして!』

と、膝関節が屈曲してきたことへの気づきと共に、患者さんが立位保持においてわかりやすく大腿四頭筋を収縮させるためのきっかけとなるように促します。

リハビリテーションにおける私たちの適切な声かけは、患者さんがもっておられるお力を引き出すためのツールになると考えられます。

適切な声かけは、機械ではなく、運動を促す思いのあるセラピストにしかできない手段です。

明日からの臨床にうまく取り入れていきたいですね。

執筆者
大沼 俊博 PT, M.S. (Health Sciences)
oonuma
六地蔵総合病院 リハビリテーションセンター 副センター長
関西医療大学 保健医療学部 理学療法学科 助教
関西理学療法学会 理事
関西理学療法学会 神経疾患理学療法 認定講師
関西理学療法学会 基礎理学療法 認定講師
株式会社WorkShift セミナー事業部
 

PT大沼俊博の臨床家ノート 脳卒中片麻痺患者さんと魚の目

慢性期の脳血管障害片麻痺患者さんにおいて、麻痺側足部に内反変形を認める方では小指側での荷重の積み重ねにより、小指周囲に胼胝(たこ、べんち)や魚の目が生じている場合があります。

胼胝(たこ、べんち)は、機械的な刺激が続く箇所において皮膚の角質層が肥厚した状態といわれています。

そして角質層が深層にまで達すると痛みを伴うようになり、魚の目となるようです。

脳血管障害片麻痺患者さんにおいて、内反足の小指周囲に荷重が重なることにより魚の目が生じますと、歩行時に痛みがでる方をお見受けします。

このような場合、靴の中にインソールを入れると魚の目への刺激が緩和され、屋外歩行は痛みなく歩けるということを経験します。

屋外では痛みなく歩けるようになるのですが、ご自宅での裸足や靴下を履いた状態での歩行においては依然として痛みがでるというお悩みを聞くこともしばしば…。

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『なんとか痛みなく靴下を履いた状態ででも自宅内を歩けるように。』

そんな気持ちで運動療法に携わらせて頂いています。

このようなケースのアプローチについてはどんな方法が考えられますでしょうか。

内反変形の足部へのアプローチ、そして立位姿勢や歩行動作に対して、その患者さんの荷重の掛け方を評価したうえで改善のための運動療法を実践していくことは、セラピストができる根本的治療になると考えます。

また外科的治療の実施、市販されている魚の目治療薬を用いて治療することで痛みが無くなり、自宅内での歩行が楽になられるということもあります。

しかし外科的な治療などを継続されていても、なかなか魚の目の芯が取りきれていない場合には、自宅内歩行にて痛みを伴われるでしょう。

靴下の底がインソールにならないかな?などと考えたりしますが、自分にはそのような優れた技術は持ち合わせていません。

片麻痺患者さんの魚の目の痛みの緩和に対して頭をひねりました。

ある日100円ショップにて女性用の靴のサポート商品コーナーの前を通りましたところ、靴の中に貼りつけて使えるシリカゲル様のクッションに目がとまりました。

なんとか使えないだろうか…。

そのとなりのコーナーには、短めの靴下が…。

このセットで魚の目に対応できるかもと思いそれぞれを手に取り、とりあえず購入しました。

患者さんの魚の目の位置と荷重の掛け方をイメージし、家に帰って試作品を作ってみました。

久々に裁縫道具を取り出し、慣れない手で針と糸を持ちました。

まず一方の靴下を手に取り、もう一方の靴下の中にいれて、靴下が二重になるようにします。

そしてその間にシリカゲル様のクッションを小指側の魚の目の位置にあたるように挟み入れます。そしてクッションの周りを囲うように2枚の靴下ごと縫いつければ完成です。
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これを魚の目でお悩みの片麻痺患者さんに自宅内歩行にてご利用頂くと嬉しいことに痛みなく歩くことができました。

200円で作ったクッション入り靴下により、自宅内生活の質の変化につながった経験です。

色々な視点から片麻痺患者さんの魚の目に対する支援ができることを学ばせて頂いています。

自宅内での歩行にお困りの片麻痺患者さんのご支援のご参考になればと思います。

執筆者
大沼 俊博 PT, M.S. (Health Sciences)
oonuma
六地蔵総合病院 リハビリテーションセンター 副センター長
関西医療大学 保健医療学部 理学療法学科 助教
関西理学療法学会 理事
関西理学療法学会 神経疾患理学療法 認定講師
関西理学療法学会 基礎理学療法 認定講師
株式会社WorkShift セミナー事業部

2018年度診療報酬改定 予定入院を増やせ!入院時支援加算が新設される!

2018年度診療報酬改定の注目ポイントの一つである入院支援が、入院時支援加算という項目で評価されることになった。

この加算は、文字通り、入院時のサポートを評価するものである(下図1・2)。

ご承知の通り、現在、在院日数の短縮や社会的入院の予防は医療政策の中で大きな課題となっている。

その課題解決のために、入院の在り方について注目が集まった。

日本における入院はどのようなプロセスで行われるかということ、そのほとんどが「緊急入院」である。

状態が急変した、疾患が増悪した、転倒して骨折をしたなど・・で救急搬送されたり、外来受診をすることで入院に至るケースが一般的である。

つまり、緊急入院は病状も重く、手術や投薬などの濃厚な治療が必要とされることが多いことから、早期の退院調整は難しく、また、在院日数も延長しやすい。

そのため、外来通院中から入院に関して調整し、状態が悪化する前に入院を促すことや、入院前より退院困難な状況の評価と対策を進めることを支援する必要があると考えられた。

1入院時支援加算

2入院時支援加算2018年2月7日 中医協資料

例えば、在宅患者で徐々にADLが低下している、嚥下能力が低下している、転倒リスクが高いなどの状況があれば、入院医療機関の外来と連携し、緊急入院ではなく、予定入院を進めていくなどのケースが実際では考えられる。

したがって、状態や状況が悪くなってからではなく、悪くなる前兆が出た時点からの入院医療機関との連携が求められていると言える。

また、退院支援だけでなく、入院支援が求められる時代では、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士には利用者の状態が悪くなる前兆を知るために、フィジカルアセスメントや疾患に関する知識がより求められることは必至である。

PT大沼俊博の臨床家ノート 外腹斜筋の斜行線維の筋緊張低下のみかた

今回は外腹斜筋の斜行線維のお話です。

外腹斜筋の斜行線維は肋骨から腹直筋鞘にかけて走行する線維です。

一側の外腹斜筋斜行線維が収縮しますと、肋骨と腹直筋鞘が近づきますので、胸郭は同側で下制します。

この時、胸腰部は屈曲と同側側屈、わずかに反対側回旋を伴う複合肢位になるかと考えます。

立位姿勢において、一側の外腹斜筋斜行線維の筋緊張が低下している場合はどうでしょうか。

ここでは例として右側を筋緊張低下側としてお話をさせて頂きます。

起こりうる運動肢位として、胸郭は右下制し、胸腰部は屈曲、右側屈、ごくわずかに左回旋位になると考えられます。

筋緊張低下を認める右側の外腹斜筋斜行線維は、従重力により短縮位となるためです。
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一側の外腹斜筋斜行線維に筋緊張低下を認め、胸郭が下制している際、実際に体表から筋の状況を視診にて確認してみますと、皮膚にしわがみられることがしばしばあります。

これは見た目からも筋緊張低下が伺えるでしょう。

この状況から、後は触診にて確定診断をしていきます。

皮膚、筋への触診において私が気をつけていることとして、筋緊張検査ではそっと自分の指腹を患者さんの皮膚の上にあてるようにしています。

ぐいぐいと筋に押し込むように触診すると筋緊張は変化してしまいますし、筋緊張が正常か、それとも低下かを判定する際に迷いが生じてしまいます。

そのため私はそっと指をあてることをおすすめします。

筋緊張が低い様相を示す皮膚のしわや、体表からみて外腹斜筋の斜行線維のエリアがへこんで見えるなど、明らかに筋緊張低下が想定される目の前の状況に対し、指腹をそっとあててみて下さい。

皮膚や筋短縮に至っていなければ、おそらく柔らく感じることでしょう。

さらには患者さんの呼吸を感じながら検査を実施してみて下さい。

筋緊張が低下している際には、患者さんの呼気時においてセラピストの指が腹部に沈み込んでいく感じを受けるかと思います。

このような思考で筋緊張低下が伺える外腹斜筋斜行線維に対して筋緊張検査をお試し頂ければと考えます。

繊細かつ適切な筋緊張検査の実践につながることへのお役に立てれば幸いです。

執筆者
大沼 俊博  PT, M.S. (Health Sciences)oonuma

六地蔵総合病院 リハビリテーションセンター 副センター長
関西医療大学 保健医療学部 理学療法学科 助教
関西理学療法学会 理事
関西理学療法学会 神経疾患理学療法 認定講師
関西理学療法学会 基礎理学療法 認定講師
株式会社WorkShift セミナー事業部

PT大沼俊博の臨床家ノート 感覚障害について

今回は感覚障害のお話をさせて頂きます。

体性感覚は、表在感覚(触覚、圧覚、温度覚、痛覚)と深部感覚(位置覚、運動覚、振動覚)、および複合感覚に分類されます。

体性感覚障害が生じる可能性については以下の領域での障害が考えられます。

1.体性感覚の受容器がある末梢部と脊髄までの経路

2.脊髄から視床における神経経路である後索路、外側脊髄視床路、前脊髄視床路、前・後脊髄小脳路

3.視床から内包に至る経路

4.内包から大脳皮質感覚領域

臨床にてみられるであろう感覚障害の原因につきましては、脳疾患、脊髄疾患、神経根障害、末梢神経障害に起因する感覚障害が考えられます。

セラピストにあまり関わりのない例を挙げますと、火傷による皮膚の損傷経験のある患者さんはどうでしょう。

皮膚の火傷により、受容器が障害されますと、そのエリアの表在感覚障害を認めるかもしれません。

理学療法士や作業療法士が担当させて頂く機会のある骨折後のギプス固定により関節を動かさない時期を過ごされた患者さんはどうでしょう。

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動かさなかった関節においては、深部感覚障害が生じる可能性が考えられます。

例を挙げますと、足関節周囲の骨折後にギプス固定をし、その後の骨癒合の向上に伴いギプスカットをしたとします。

そして患側に体重をかける練習の許可が出た際、足関節や足部には関節可動域制限を認め、足関節周囲筋には筋短縮や筋力低下を認めることが考えられます。

足関節や足部をしばらく動かせない時期を過ごし、さらには荷重をかけていなければ、いきなりしなやかな運動はできないことでしょう。

このような場合患者さんから、地に足をつけて体重を乗せていく際、どうやっていたかわからないなど、深部感覚障害を疑うコメントを聞かせて頂くことがあります。

この際、検査により位置覚、運動覚の障害が明らかになったならば、その改善を視野に入れて理学療法や作業療法を行う必要があると考えます。

今回のようにギプス固定後に生じた深部感覚障害の改善を考慮して運動療法を行う場合、まずは関節可動域の拡大と共に筋力の向上が必要になると考えられます。

関節可動域や筋力が向上したにも関わらず、動作に反映しない場合には、獲得したいADLに必要な姿勢、動作の練習を質良く練習していくことで、運動学、解剖学観点からも理想的な筋活動を伴う正常運動の獲得につながると考えられます。

そしてこれら運動学、解剖学観点に基づく正常運動を継続して練習すること自体が正しい感覚入力につながり、感覚障害に対してのアプローチが成立していくものと考えています。

明日からの臨床での思考のお役に立てれば幸いです。

執筆者
大沼 俊博  PT, M.S. (Health Sciences)
oonuma
六地蔵総合病院 リハビリテーションセンター 副センター長
関西医療大学 保健医療学部 理学療法学科 助教
関西理学療法学会 理事
関西理学療法学会 神経疾患理学療法 認定講師
関西理学療法学会 基礎理学療法 認定講師
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