PT大沼俊博の臨床家ノート さりげなく視界へ

わたしが患者さんと立ち上がり練習をしていた際のことです。

患者さんによっては殿部離床への介助をした方が立ち上がりが行いやすい方、簡易型の手すりを配置した方が安心できる方、口頭指示を入れると混乱して運動がぎこちなくなってしまう方など、患者さんの症状は様々です。

「立ち上がり動作では、端座位から股関節屈曲に伴って体幹が前傾する。その過程の途中から膝関節の伸展が起こり、身体が上方へ。股関節は伸展運動に切り替わり直立へと…。」

ある日そのようなことを心のなかでつぶやきながら患者さんの立ち上がりを誘導していました。

患者さんの側方からハンドリングを行う際、股関節屈曲に伴って体幹が前傾するように骨盤から誘導する場合や、股関節周囲筋の機能が比較的良ければ、より遠位部の体幹から股関節屈曲運動を誘導します。

このとき患者さんには股関節屈曲に伴う体幹の前傾を感じて頂くために、わたしの姿が患者さんにぼんやりとみえる位置にてハンドリングを行うようにしています。

みなさん、目の前にご自分の示指を立ててください。

そしてそれを見つめてみてください。

この時、示指はくっきりと見え、その周辺はぼんやり目に映っていることでしょう。

人差し指以外のものが動いているならば、ぼんやりと動いてものを感じ取れるかと思います。
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わたしは運動療法のなかで、立ち上がり動作のきっかけや運動の方向を共有するために、患者さんの側方から誘導する場合にはわずかに先行して運動のお誘いをおこなうなかで、患者さんが運動の方向を感じとれるように視野の中に入るように配慮しています。

「一緒に動きましょう。」

運動の共有が可能になってくれば立ち上がりの屈曲相の誘導や伸展相の誘導の手は離していけるでしょう。

そうなれば殿部離床のための膝関節伸展のタイミングをお知らせするだけの声かけだけで済むようになるかもしれません。

セラピストが患者さんをハンドリングにて誘導する際に配慮している点として、運動のきっかけを促す手段のひとつに、患者さんの視界の中に入っていくことも有用と考えます。

臨床のヒントになれば幸いです。

執筆者
大沼 俊博 PT, M.S. (Health Sciences)
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六地蔵総合病院 リハビリテーションセンター 副センター長
関西医療大学 保健医療学部 理学療法学科 助教
関西理学療法学会 理事
関西理学療法学会 神経疾患理学療法 認定講師
関西理学療法学会 基礎理学療法 認定講師
株式会社WorkShift セミナー事業部