0204373f1e1e6d8b1102a07298677a0e_s

PT大沼俊博の臨床家ノート 運動療法の工夫

立位練習の際のお話です。

立位をとると、股関節の屈曲筋・伸展筋の筋緊張低下や股関節の深部感覚障害が主たる機能障害であることにより、股関節屈曲に伴い体幹が前傾し、いわゆる前かがみになってしまうケースの運動療法を経験させて頂きました。

このような場合、立位での動作において、股関節屈曲に伴って前方に頭部から転倒傾向を認めたり、股関節屈曲と共に足関節が底屈し、後方に尻もちをつきそうになる危険性がありました。

「まずは股関節を伸展方向に誘導して直立位を保持できるように練習したい。」という思いにて身体に触れてハンドリングを試みたり、口頭指示を入れてアプローチを行おうとしました。

しかし恐怖心を感じてしまい、なかなか治療介入が難しいのです。

どうすれば自分で直立位保持ができるかな?

わたしが前方から両手を差し出し、両手を軽く支持してもらうなかで股関節を中間位方向へ誘導しようとしても、「怖い...。」と首を振られます。

患者さんの背後にまわり、胸部を後方に、これと共に殿部をわたしのお腹あたりから前方に誘導することで股関節の伸展運動を誘導しようと試みました。

これもなかなか難しい…。

『なんとか怖がらず、立位で股関節屈曲・伸展筋の筋緊張を改善できないものか。』

77f7fc037f6203d76f7923cdcc2bc277_s

そこでふと視点を変え、高さを変化できる治療台を患者さんのおへその高さくらいにあわせて前方に置きました。

目の前に動かない治療台があり、身体を治療台に少し預けることができるため、視覚的にも安心感を持たれたようです。

最初は両手で治療台を支持しながら腹部も治療台に接触してもらう。そこから両肘関節の伸展と共に股関節を伸展方向に誘導…。

うまくいきました。そして徐々に両手の支持を減らして頂き、股関節屈曲、伸展中間位保持が可能になると共に、治療台から手支持や腹部での支持をはずすことができました。

あわせて股関節屈曲・伸展筋の静止性の活動が得られていることを確認できたのです。

これに伴い立位保持の安全性向上につながり、さらには一側上肢のリーチ動作や、両上肢の活動につなげることができました。

恐怖心があるような症例で、治療がうまくいかなかったことに対して、動かない治療台を前方に配置することで股関節へのアプローチが可能となった例です。

運動療法時の環境設定の工夫は、患者さんの能力を引き出すためには大変大切になることを痛感しました。

明日からの運動療法に、ひと工夫を考えてみてはいかがでしょう。

執筆者
大沼 俊博 PT, M.S. (Health Sciences)
32706684_246788225868896_2239270414830272512_n
六地蔵総合病院 リハビリテーションセンター 副センター長
関西医療大学 保健医療学部 理学療法学科 助教
関西理学療法学会 理事
関西理学療法学会 神経疾患理学療法 認定講師
関西理学療法学会 基礎理学療法 認定講師
株式会社WorkShift セミナー事業部